「中秋の名月」-お月見をしよう!

夜耳をすますと聞こえてくる虫の音に、秋の気配が感じられるようになりました。読書の秋、スポーツの秋、食欲の秋…みなさんはどの秋が好きですか?
空がすみ渡るこの季節は、また、お月見の季節でもあります。お月見と言えば「十五夜」(旧暦8月15日の夜)ですが、この夜の月を「中秋の名月」と言うのは、みなさんご存じですよね。「中秋」とは旧暦の秋(7、8、9月)のちょうど真ん中、つまり8月15日のことで、この時期に満月が見られることから、「中秋の名月」と呼ばれるようになりました。
では、どうしてこの夜にお月見をするようになったのでしょうか。それは中国の神話に由来しているのです。
昔々、10の太陽が一度に空に現れ、大地は灼熱地獄と化しました。そこで羿(げい)という弓の名手が9つの太陽を次々と射落とし、最後に残った太陽に、決まった時間に昇り、沈んでいくことを約束させました。こうして気候が落ち着き、作物も順調に育ち、人々は平和に暮らせるようになりました。羿の名前は天下にとどろき、彼は嫦娥(じょうが)という娘を娶り、幸せな生活を送っていました。ある日羿は、西王母(中国の伝説の女神)に不死の薬をもらいました。ところが、嫦娥がその薬を飲んでしまい、月へ舞い上がってしまったのです。8月15日のことでした。悲嘆にくれた羿は、嫦娥を想い、毎年8月15日になると、庭に嫦娥が好きだった果物などを置き、月を眺めて彼女をしのびました。それが世間に広まり、「中秋節」になったと言われています。
日本に「中秋節」が伝わったのは平安時代で、貴族たちが水面に映った月を眺めて歌を詠み、月見の宴を楽しんでいました。それが江戸時代なると、庶民が収穫した芋や米粉で作った団子を供えて月見を楽しむようになったのです。
ところで、日本では、月の兎は餅つきをしていると言われていますが、中国では、月の兎は薬草をついていると言われています。この兎は玉兎と呼ばれていて、西王母が不老不死の薬を作るのを手伝っているのだそうです。
現在の中国では、「中秋節」には家族が集まり、月餅(げっぺい)を食べながらお月見を楽しみます。「中秋節」が近づくと、商店には月餅の特設売り場ができ、皆こぞって月餅を買い求めます。きれいに箱詰めされたものから、スーパーでばら売りされているものまで、値段はピンからキリまであります。
日本でもよく知られている月餅ですが、中国の月餅は作り方も味も地方によって異なり、200以上の種類があると言われています。たとえば広東の月餅は、ココナッツの果肉や蓮の実をすりつぶしたもの、落花生、スイカの種、胡桃、ゴマ、アンズ、棗、卵の黄味、ハム、チャーシューなど、様々なものが入っています。
今年の「中秋節」は9月27日です。最近「月光浴」という言葉が聞かれますが、月の波動には心や体を浄化してくれ、気力を充実させる作用があるのだそうです。また「月光浴」は、リラックス効果、癒し効果をもたらしてくれるとも言われています。秋の夜長、勉強で疲れたときには、外に出てお月見をしてみませんか。(稲井富赴代)