「端午の節句」は邪気祓いの行事だった

風薫る5月 ― 今年も元気よく泳ぐ鯉のぼりの姿を見ることができました。
ところで、5月5日の子どもの日が、どうして「端午の節句」と呼ばれるか知っていますか? 実は「端午の節句」の起源は、古代中国の邪気祓い行事なのです。
「端」は初めという意味で、「端午」は、月の初めの午(うま)の日という意味になります。それが後に、中国語で「午(WU)」と「五(WU)」の発音が同じことから、5月5日を指すようになったと言われています。
旧暦の5月5日は雨期に入る頃で、蚊やハエが出てきたり、伝染病が流行ったりして、亡くなる人がたくさんいました。そこで人々は、香りの強い菖蒲や蓬を軒に吊るしたり、菖蒲酒を飲んだり、菖蒲湯に浸かったりして邪気祓いをしたのです。
こうした古代中国の風習が日本に伝わり、鎌倉時代になると、菖蒲が「尚武」や「勝負」と同じ発音で、また菖蒲の葉の形が剣に似ていることから、男の子の祭りに変わっていったと言われています。
端午の節句に欠かせない食べ物といえば、粽(ちまき)ですが、その歴史は古く、約2300年前の中国・戦国時代の故事に由来していると言われています。
楚(現在の湖南省辺り)の政治家で有名な詩人・屈原が、中傷によって失脚し、失意のうちに汨羅(べきら)という川に身を投げました。それを知った地元の人々は、屈原の亡骸が魚に食べられないようにと、竹筒に米を入れ、次々と川に投げ入れました。それが5月5日だったので、毎年屈原の命日である5月5日には、粽を作って屈原の供養をするようになったと伝えられています。
中国の粽は、もち米を植物の葉で三角錐の形に包み、茹でたり蒸したりしたものですが、地方によって作り方が大きく異なります。包む葉は、北の方はヨシ(アシ)の葉、南の方は竹の葉が主流です。
また、北の方は棗や小豆餡を入れた甘い粽が多いですが、南の方は肉、ハム、卵などの具材を入れ、醤油や塩で味付けした粽で、種類が豊富です。
ちなみに、日本では、昔は茅(ちがや)の葉で巻いていたことから茅巻(ちまき)と呼ばれるようになったそうです。
先日、中国の風習にならって、我が家でも玄関に蓬を吊るしました。しかし、虫よけ効果はあまり見られないので、日本の蓬は中国の蓬ほど香が強くないのかもしれません。
中国の「端午の節句」(旧暦5月5日=今年は6月20日)には、粽を(作れないので買ってきて)食べて、菖蒲で邪気祓いをしようと思います。(稲井富赴代)