医療ツーリズムというビジネスを知っていますか。

1.「医療ツーリズム」というのはこんなイメージのビジネスです。
病気が気になる人は香川県に検診に行きましょう。先端医療機器と素晴らしい診断技術を持った先生がいます。診断の時間以外は温泉にはいるとか、観光・ショッピングを楽しみませんか。優秀な通訳兼医療コーディネータがご案内いたします。1週間から10日間の日本滞在で、健康診断や検診を終え、安心して帰国してください。中国語の通訳が一緒ですので、言葉を気にせずに、日本を楽しめます。
というようなビジネスです。この医療ツーリズムビジネスは香川県の交流人口を増やし、若い人の職場や中国からの留学生の職場を作るのにも役立ちます。
2.難しい医療ツーリズム
しかしながら、日本では「医療ツーリズム」がビジネスとして、うまくいっているケースはほとんどありません。何故かというと、「日本が医療国際化における後進国であるから」です。たしかに、日本の医療技術は進んでいて、全国的にも均一かつ均質な医療サービスの提供ができるようになっています。しかしながら、アジア圏をみると、国全体では均一・均質で高度な医療サービス提供が出来ていない国でも、一部進んだ都市圏においては日本に負けない医療が提供されている国があります。早くから国際化に取り組み、海外の富裕層を受け入れることを進めてきた「医療の国際化先進国」があります。例えば、タイのバンコク、シンガポール、台湾の台北、韓国のソウル(ソウルは美容が中心)などです。日本の病院はこうした国々の高度な医療が出来る病院には共通語が英語で無いなどで負けています。そのため、日本に医療目的で来日する海外の富裕層が少ないのです。では、全く勝機はないのか?というとそうではありません。「JAPAN」をブランドとして認識する国の人達をターゲットにすることです。具体的には、東南アジアの先端医療の出来る病院の共通語は英語です。受付・看護婦・医者と患者に接するすべての人が英語を話します。そこで欧米の患者は、欧米の高度医療の出来る病院より費用が安いこともあり、喜んでやってきます。しかし、中国や台湾の患者や健康診断を希望する人は、英語が共通語では喜んでくれません。喜んでくれるのは、中国語が共通語の病院です。日本の病院に中国語の通訳いれば、日本の勝機があります。
3.健康診断・人間ドックには医療通訳が必要です
健康診断(人間ドック)というものの定義ですが、「健康状況などを調査し、疾病の予防や障害の早期発見および保健指導に役立てるために行う検査・診断のこと」とされ、日本では健診に掛ける費用と健診からもたらされる効果の検証が進み、健診項目の見直しが行われ続けています。現在は、生活習慣病対策として行われているのが実態です。いわゆるメタボ対策です。具体的には、身長体重、腹囲、血圧、血液検査(脂質、糖、肝機能、腎機能)、検尿検査が行われています。血液検査では、貧血検査、肝機能・腎機能検査の一部が省略されています。また、心電図検査や胸部X線検査も省略されています。このように、現状の日本の健診は、一般にイメージするものからは項目も削除され、先進的に進化したものです。このように日本人は意識することなく、健康診断を受けていますが、中国の人が受けるには、医療通訳は欠かすことが出来ません。健診も同じです。
検診 と表記するものの定義が、「ある特定の病気の有無を調べるために行う検査・診断のこと」とされます。健診項目から削除された項目は、「健診項目」ではなく「検診項目」であると判断されたものが削除されました。例えば、心電図は、生活習慣病対策の検査でなく、心臓の病気をスクリーニングする検査であるなどです。
4.医療ツーリズムのフロー
具体的には医療ツーリズムのフローの概要は以下の通りです。
① 治療・健診に関する問い合わせ
② 相談  症状のご確認•要望のご確認 •候補となる医療機関と受け入れ条件を患者さんに提案(治療方針,費用,スケジュール等)
③ 決定  •条件をご確認,医療機関を決定 •来日・受診にかかわる各種手続の代行,サポート
o治療・手術日等のスケジュールの調整
oビザの申請,航空券,宿泊の手配等のサポート
o支払方法の確認
④ 来日  •空港へのお迎えおよび交通手段の手配
⑤ 検査・治療
検査・治療の際の通訳者のアテンドサービス (多言語対応24時間ホットラインを利用など)
治療後のレポート翻訳サービス  医療通訳士が必要  フィルムの提供
⑥ 帰国 •必要に応じて,空港までのアテンドおよび交通手段の手配
フォロー
•ご要望により日本の医療機関による経過の確認と再診のサポート
以上が問い合わせから、来日しての健康診断や治療、帰国までのフローです。
5.「医療ツーリズム」ビジネスの進め方
そこで、中国からの留学生とともに、日本の医療に対する信頼感が高い中国の人を対象に「医療ツーリズム」ビジネスを考えています。(丸山 豊史)