AIは期待から現実へ

無人スーパーや無人コンビニ、現金を持たずスマホで支払い、空飛ぶタクシーと身の回りでもいろいろなニュースが流れている。

ところで「無人スーパー」というのは、レジに店員さんが居ず、何らかの方法で代金を支払うスーパーマーケットである。

日本では、高松市内でも、レジは無人でお客様自身がバーコードリーダーで買い物代金を確認して支払うスーパーが宮脇町にある。また、東京久我山のスーパーにはレジの店員はいるが、店員は購入した商品を金額計算のためバーコードレーダーを通すだけで、そのあとの料金精算は駅の切符自動販売機のような機械でお客様が自分で行う店がある。

このように日本でも少し進歩している。ところが海外を見ると、中国では無人のコンビニが数多く存在するし、アメリカでは実験店舗の位置づけではあるが無人のスーパーが存在する。

このような店舗無人化の技術を見ると、まず入店者確認は ①駅の自動改札のようなものを通り、そこでスマホを読み取り、入店者の銀行口座を確認している。次に買い上げた商品の確認は2つの方法がある。技術的に確立された方法は、②商品すべてに無線タグをつけるという方法である。商品購入者が店を出るときに、無人ゲートを通ると、商品の無線タグが読み取られ、商品代金が確定する。そして次に、スマホで確認した銀行口座から引き落とすという手順で代金清算が完了する。つまり、商品購入者自身は出口で無人ゲートを通るだけで代金清算が終わるというわけである。

実はこの商品に無線タグをつけるというアイデアは平成の初めからあったし、その無線タグのサイズや性能は30年前のものも現在のものとほぼ同じである。ただし、当時は無線タグ1個が5円とかであった。そのため、100円のパンに無線タグをつけると105円と高くなった。これでは高すぎて利用できないというのが当時の判断であった。現在でも無線タグはそんなに安くはなっていない。

中国のコンビニでは、無線タグをつけ商品が高価になることよりも、無人店舗という話題性や店員費用の削減を優先させたことで実現している。ただし、アメリカでは、今も無線タグの価格が障害となって、実現されていない。日本でもローソンが無線タグコンビニを発表した。このコンビニがどのように発展するのか興味が尽きない。

いまアメリカで実店舗に近づいている方式は、購入者がどの商品を購入したかをテレビカメラでチェックする方式である。入口の無人ゲートで顔写真を撮るとともに、スマホ情報から銀行口座を確認している。そして、店内に入ると数多く(小さな店舗でも150台とか)のカメラで、入店者毎にどの商品棚の前にいるか、どの商品を棚から何個取ったかを確認している。そして店を出るまでに、銀行口座からの引き落としを終えている。ところが、このシステムは子供が間違えて違う棚に戻した時や、カメラから隠れながら商品をとった場合はうまく対応できない。ところが今月2018年10月JR東日本が駅構内にこのタイプのコンビニを開店した。技術的には上記の問題点をどのように解決したのか、未来型コンビニを開店したというPR効果やブランド価値をどのように考えているのであろうか、興味が尽きない。

また、数百円とか数十円の支払いをスマホで行うことはどうであろうか。中国では個人的な支払いの約半分はスマホ決済になっている。この間、中国に帰国した卒業生から聞いた話や最近行った西安市では若い人は現金というか紙幣は持っていないようである。先日西安市の地下鉄の駅で、私が地下鉄カード購入しようとしたときのことである。購入の仕方がわからずに困っていると、若い日本語もわかる女性が、「私のスマホで購入しましょうか?」と言ってくれた。そこでお願いし、無事地下鉄カードを購入することができた。そこで、その代金を紙幣で彼女に渡そうとした。ところが、彼女は「紙幣をもらっても使い道もないし、こまる。」というので、一緒にいた中国の友人から、eキャッシュで支払ってもらい、彼に私が紙幣を渡すということがあった。このようにスマホ決済は広く行き渡っている。

ところが日本やアメリカなどの先進国ではスマホ決済は普及していない。これは先進国ではセキュリティ等に関する社会課題が解決されないためであり、日本やアメリカ等では現在はクレジット決済というコストの高い方法しか普及させることができない。

空飛ぶタクシーは説明するまでもなく、現在の技術ではなく、近未来の技術である。
このように、AIの進歩は目覚ましく、その進歩により実現する生活が数多く語られ始めた。ところが、現実にその技術を生活に役立てよう、生活に組み込もうとすると、各種の問題が出て、結局は今まで通りということがあちこちで起きている。
ただし、このような状況にも関わらず、新しい技術を用いて新しい社会や生活を実現しようという数多くの若い人が自分達で会社を作り、今までの常識にとらわれず研究開発を進めている。この報告を読んだ君たちもぜひ新しい世界を切り開く人になってほしい。

(丸山 豊史)