東山魁夷せとうち美術館の特別展を見た。今回はリトグラフ2作品に興味を惹かれた。
一枚は「道」、あと一枚は「夕凪(朝涼)」である。
それぞれ1949年と1950年の作で、青森県八戸の種差海岸に取材したものである。
多くの人に親しまれている作品だが、添えられている題材となった風景写真との相違が興味深い。
魁夷にとって、目にした「道」は単なる道ではなく、自身の遍歴と未来への道、絶望と希望を織り
交ぜて遥かに続く一筋の道なのだと知った。
牧場を描いた「夕凪」には、台地の上に実在する灯台が消え、馬と岩とが見る者の心を癒すように、
悠然と配置されている。魁夷は、自分の目と心を通して見た世界を、鮮やかな色調で画布の上に
再現しているのだ。
何気ない風景のなかにも、私たちが心を開放し、心眼を研ぎ澄ませば、本当に大切なものが見え
てくるような、そんな気持ちにさせられた。(経営学科 池内 武)
東山魁夷せとうち美術館特別展