私は幼い頃から読書が好きで、お昼休みや放課後には学校の図書館に通っていました。大学生になってからは、ちょっぴりと図書館への足が遠のき、レポートを書くための資料を探したり、友達と一緒に試験勉強をする時だけの利用になっていました。ですが、大学院へ進学しようと決意してからは、一人コツコツと大学院入試の勉強をするために毎日のように近くの市立図書館に通うようになりました。大学院入学後は、研究に必要な書籍を探しに図書館に通い続け、時には一日の大半を図書館で過ごすこともありました。
そして現在も専門書などをたくさん読む必要があるので、本学や香川大学の図書館などをよく利用させてもらっています。(実はこの原稿も、図書館で書いています。)さて、大変お世話になっている図書館が日本にできたのはいつの頃か、皆さんはご存知でしょうか?今回は日本の図書館の歴史について、少し振り返ってみることにします。
8世紀の日本には、すでに図書寮(ずしょりょう)という仏教に関する書籍を集めた一種の国立図書館が、奈良時代末期には芸亭(うんてい)を代表とする貴族・学者が収集した書籍を一般に公開する一種の公開図書館があったそうです。鎌倉時代以降には、金沢文庫や足利文庫など武家に集められた書籍が一般にも公開されるだけでなく、貸出も行われていた事例があるとのこと。そして江戸時代には文武兼修の風潮が高まり、多数の学校(幕府直轄学校、藩校など)には学生が書籍を閲覧できるよう図書館設備が備えられていたそうです。
かなり昔から日本にも図書館があったのですね。そして、時代を下ると共に仏教書から専門書へと収容図書の種類が増えていき、多くの人が閲覧・貸借できる仕組みへと変化していっていることが分かります。ですが、未だ専門書のみの所蔵で、本学の図書館のように専門書や教科書、参考書の他、新聞や雑誌、小説等の幅広い種類の書籍は所蔵されていませんよね。現在のような近代的な図書館が設置されるようになったのは、明治以降、西洋文化の移入による近代化が進められるようになってからです。
まず、日本に近代的な図書館として西洋の国立図書館を紹介したのは、1万円札でお馴染みの福澤諭吉です。彼の著書『西洋事情』(1866年)の中で「西洋諸国の都府には文庫あり。ビブリオテーキと云ふ。日用の図書図画等より古書珍書に至るまで万国の書皆備り、衆人来りて随意に之を読むべし」と紹介しています。「文庫」は今でいう図書館のことで、幅広い分野、各国の書籍が収められている西洋の図書館の存在が広く知られるようになりました。
そして1967(明治元)年、昌平学校が所蔵していた書籍や開成所(現在の東京大学)の所蔵していた洋書を基本とした書籍館が国立公共図書館として開館します。この図書館では、今ではなかなか考えられませんが、閲覧は有料、しかも貴重書と一般書とで閲覧料も違っていたそうです。これに続き、1872(明治5)年、新聞や洋書、翻訳書や新たに出版書籍など幅広い書籍を集めた日本初の近代的な公共図書館として、京都に集書院が開館しました。ここもまた書籍の閲覧は有料でした。閲覧料が無料の図書館としては、1875(明治8)年に文部省が設立した東京書籍館があったようです。
その後も各地で近代的な公共図書館の開館は相次ぎます。香川県にも近代的な図書館として、1905(明治38)年に香川県教育会図書館が開館され ます。残念ながら?この図書館でも閲覧は有料でした。開館時の蔵書数は1万8,846冊、開館月には平均して1日約70人の閲覧者が訪れていま す。この閲覧者の中には、香川を代表する文豪、菊池寛の名前もあったそうですよ。
もちろん国立図書館や公共図書館のみならず、大学にも図書館が設置されていました。当初、大学図書館の役割の一つは入手困難な洋書の教科書を学 生に貸し出すことでした。教科書を貸し出してくれるなんて羨ましいと思う方もいるでしょうが、慶應義塾などではこの教科書の貸出は有料、紛失や汚 損した場合には修復料金を徴収していたそうです。それに、授業に必要な書籍以外は館外へ貸し出さない図書館もあったようです。
それに比べて現在の本学図書館では、教科書は館内で閲覧はできますし、その他多くの書籍は貸出可能です。しかも、閲覧・貸出ともに無料です。昔の図書館に比べてずいぶん便利ですよね。
皆さんレポート等の資料を探しに、小説や雑誌、新聞等を読むために、PCを使うために・・・様々な折にぜひ積極的に大学図書館を活用して下さいね!(津村 怜花)
参考文献
草野正名[1972]『増訂 図書館の歴史―日本および各国の図書と図書館史―』学芸図書株式会社。
熊野勝祥[1994]『香川県図書館史』香川県図書館学会。
社団法人日本図書館協会編[1992]『近代日本図書館の歩み 地方編』社団法人図書館協会。
―――――[1993]『近代日本図書館の歩み 本篇』社団法人日本図書館協会。
福澤諭吉[1866]「西洋事情」富田正文・土橋俊一編『福澤諭吉選集』第1巻、1980年、岩波書店。
図書館通いのすゝめ