冬に咲く花

 今年も我が家の庭に、ロウバイの黄色い可憐な花が咲きました。ロウバイは厳寒期に花を咲かせる落葉低木で、江戸時代初期に中国から渡来したと言われています。中国では梅、山茶花(サザンカ)、水仙(スイセン)と合わせて「雪中四友」と呼ばれています。なかでもロウバイは12月から2月にかけて開花する新春の花です。我が家では、毎年年末になるとロウバイの落ち葉をきれいにかき集めて庭掃除をし、開花の中で新年を迎えます。
ロウバイの名前の由来には二説あって、蝋で作られた梅に似た花とも臘月(陰暦の12月)に咲く梅に似た花とも言われていますが、私にとってロウバイは年末の風物詩なので、後者のほうがしっくりきます。
うつむき加減に咲く花は、蝋細工のような半透明の淡い黄色で、そうっと触れないと壊れてしまいそうなほど繊細で、どことなく儚げです。観る人を自ずと優しい気持ちにさせる花です。また、ロウバイはとても良い香りがする花で、英語名はWinter sweet”と言います。
庭の片隅でひっそりと咲くロウバイは、ほんのり甘く上品な香りを漂わせ、控えめで実に奥ゆかしい。梅や山茶花に比べると地味ですが、真冬の殺風景な庭に彩りを添えてくれる健気な花です。夏目漱石や芥川龍之介がこの花を愛したのは、ロウバイに人の世を重ねて観ていたからかもしれませんね。
我が家の庭では、このあと2月には梅の花、3月には山茱萸(サンシュユ)の花が楽しめます。長引くコロナ禍で心が沈みがちですが、寒い時期に咲く花に春の息吹を感じつつ、前を向いて進んでいきましょう。

稲井富赴代