「いつかユキチ」「いつかエイイチ」

経営学部教員のブログ「いつかユキチ」に、今回、初登板させていただきました。ブログのコメント「葉っぱのつぶやき」には、「たぬきの葉っぱがお金に変わるようにと、…」あります。とすると、「ユキチ」とは現在の一万円札の肖像の「福沢諭吉」を意味しているのでしょうか。

言うまでもなく、福沢諭吉は慶應義塾大学の創始者です。また、「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」で有名な『学問のすゝめ』の著者で、学問(とりわけ実学)の必要性を強調した啓蒙思想家、教育者です。複式簿記を日本に紹介したことでも有名ですね。そして、一万円札の肖像ですが、1984年にそれまでの「聖徳太子」から「福沢諭吉」(ユキチ)になりました。

その一万円札の肖像が、2024年度、40年ぶりに「渋沢栄一」(エイイチ)へと変わります(もちろん福沢諭吉の一万円札も引き続き使えます)。渋沢栄一は、第一国立銀行(現在のみずほ銀行)や東京海上保険(現在の東京海上日動火災保険)、帝国ホテルなど数多くの企業を設立し、「日本の資本主義の父」と呼ばれています。

今回、なぜ渋沢栄一が一万円札の肖像に選ばれたのか。もちろん、実業家としての功績や、福沢諭吉と並ぶ日本経済近代化の功労などが高く評価されたのでしょう。加えて、私は、栄一が利益一辺倒ではなく、人間性や人格の磨き方(道徳)の大切さを強調した点(『論語と算盤』)、また、日本赤十字社の設立に携わるなど社会貢献活動に力を入れたことにも注目しています。

私たちは今、コロナ禍にあり、またポストコロナの時代にあっても人口減少社会に生きるという新しい課題に直面しています。そこでは従来の「経済成長至上主義」ではなく、真の豊かさを取り戻すための新たな価値観、すなわち「地域の力」や「共助の大切さ」、「学問・実学の重要性」などが見直されるのではないか。その意味で、改めて100年余り前の諭吉や栄一の考え方・生き方に学ぶところは大きいと思います。本学においても、「いつかユキチ」「いつかエイイチ」を志す学生が数多く出てくれることを大いに期待しています。                                            (蓮井 明博)