人種差別考

 この数カ月、新型コロナウィルス問題で世界中が大騒ぎになっているなか、あらたに世界を揺るがす問題が出てきている。人種差別問題である。アメリカの白人警察官が黒人を拘束して死に至らしめたことに端を発して同国にとどまらず、世界各地で人種差別に対する抗議デモが頻発している。日本の地方に住んでいる限り、そうした露骨な人種差別の場面に遭遇することはほとんどないが、「人種のるつぼ」と呼ばれるアメリカをはじめとして様々な人種が住んでいるヨーロッパでは差別を直接経験することも珍しくはない。私自身露骨な人種差別を経験したことはないが、それらしい経験はしたことはある。ある外国の観光地のレストランで食事をしようと店に入ったところ、窓際の外の景色が見える席が空いていたので、そこに座りたいと言ったところ、私の言葉を無視して中の薄暗い席に案内された。すると、そのすぐ後に白人の家族が入店してきて何か店員と話をして窓際の席に案内されたのである。しばらくしてもまだ数席窓際の席は埋まらずにいた。好意的に解釈すれば、その窓際の席は予約席であったのかもしれない。単なる私の思い過ごしであったかもしれないが、あるタレントが私と同様の経験を語っていたので、なるほどと合点がいった次第である。
 もう一つ差別とは言えないかもしれないが、ドイツで知り合いからかなり前に聞いた話である。その友人が言うには、アジア人の中では日本人は比較的歓迎されている。どうしてだと思う?と私に尋ねてきた。私が回答できずにいると、ドイツでは日本人はゲスト(お客様)だ。観光にきて現地にお金を落としてくれるか、あるいはビジネスでしばらく滞在して日本に帰る。つまり、ドイツに永住する日本人は稀だから、ゲストという扱いになるそうだ。しかし、他のアジア人はドイツに住み続ける何の利益にもならないやっかいな人間だそうである。
 この数年、特に旧東ドイツ地域では人種(移民)差別をめぐる事件が頻発しており、移民排斥を唱える極右政党、AfD(ドイツのための選択肢、2013年誕生)
が躍進している。また、それを抑え込もうとする勢力も台頭しており、ドイツの将来を懸念する声が強まっている。一体ドイツの民主主義はどこに向かっている
のであろうか?(井藤 正信)