通園バス運行会社の設立

本年3月に卒業した学生の卒業論文で興味深い論文があったので紹介する。
幼稚園バスは朝たくさん走っている。しかしどのバスにも園児は少ししか乗っていない。ところが映画等で見る海外の通学バスは生徒がたくさん乗っている。そこで、園児にとって、安全で安価なバス通園の方法はどのようなものかを考えてみた。
バスが公共機関として利用が始まるのは、昭和30年代頃とされている。この頃、オリンピックの開催、東海道新幹線の開業、名神高速道路の開通などの社会背景のもとバス事業も大いに盛況を迎えることとなる。旺盛なバス需要によって、バスターミナル等のプラットフォームが新設され、バス事業の系列化や大手私鉄の地方進出が始まり、さらには都市間長距離輸送にもバスが進出するようになった。輸送人員では昭和25年からの10年間で13倍の成長を遂げるようになる。経済成長の著しい昭和44年に全線開通した東名高速道路にも長距離高速バスが運行開始した。
このように発展したバスがどの程度幼稚園で通園バスとして使用されているのであろうか。まず、海外における通学通園手段としてのバス事例を調査した。スクールバスに関する法的枠組みについては、連邦や中央政府レベルで制定されているものと地方自治体レベルで制定されているものがある。連邦や中央政府は、スクールバスの安全基準や道路交通に関する法律を制定し、地方自治体は通学支援の対象となる児童生徒やスクールバスの費用負担を規定している。地方自治体は、それぞれの実情を考慮しつつ、ルートやバス停の位置の決定、バス事業者の選定、運営費用の拠出等を行っている。しかし、実際のスクールバスの運行については民間のバス事業者に委託するケースが多い。
イギリス、ドイツ、フランス、スウェーデン、オーストラリアでは、バス事業者は、児童生徒の輸送以外の時間帯では路線バスや観光バス等他の目的にバスを転用し、経済性を確保している例が多くみられる。一方で、アメリカでは、民間のバス事業者や学区が黄色に塗装された専用スクールバスを運行し、これらは通学や課外授業等児童生徒の輸送のみに使用されている。スクールバスには子どもの安全を確保するために、監視カメラやシートベルト等様々な安全装置が備えられている。また、スクールバス事故の発生状況から、特に乗降時の危険性が高いことが着目されており、バス停周辺の安全確保について対策が講じられている例もみられる。
国別に少し述べると、フランスでは、1982年の「国内交通の指針に関する法律(LOTI)」に基づき、1984年からスクールバスの地方分権化が進展し、県や都市交通共同体等がスクールバスの路線、運賃、委託バス事業者等を決定している。スウェーデンでは、自治体ごとに、スクールバスに関する制度を定めている。ドイツでは、連邦や州が専用スクールバスに関する法令を体系的に整備している。しかしながら、具体的なスクールバスの運行方法は州によって大きく異なる。
次に、2005年現在で、日本には13、949の幼稚園があり、うち私立幼稚園は8,354である。この私立幼稚園のほとんどの幼稚園がバス通園を行っていると考えられる。日本における通園バス運行はそれぞれの幼稚園が行い、
①法律上は公共の福祉を確保するため、やむをえない場合のみ運行が許される。
②幼稚園バスの仕様としては、幼児用のシート・シートベルト・ドアストップ 等が必要である。
③バス運転手としては子供が好きで丁寧な運転ができる運転手が求められており、
多くの幼稚園バスは会社等を退職した子供が好きな人が通園バスの運転手をしている。また、乗車する園児の安全を確保するため、先生が乗車し、園児の補助を行っている。
このように幼稚園ごとの運行を行う結果、バス利用園児一人当たり2000円から3000円程度の費用を徴収しているものの、徴収額以上の金額を幼稚園が負担しなければ収支が均衡しない。そこで、通園バス運行会社を多くの幼稚園が共同で設立し、平均乗車園児数を倍増すればバス利用園児からの徴収費用のみで収支をバランスする事が出来、排気ガスの排出量も半減できる。以上のような論旨であり、外国の事例から考えても実現する可能性とメリットは大きいのではないだろうか。(丸山 豊史)