上海の正月花火見物

上海の虹橋空港が近づいてきた。「シートをお戻し下さい」とのアナウンス。地上に近づくとともに、飛行機は雲の中に入っていった。何となく日本の雲とは違うようだ。日本の雲はもっと薄い部分と雲の濃い部分があるのでは。「上海はPM2.5濃度が大きいと聞いていたせいか、雲ではなくPM2.5の中に入っているようだ」と思っている間に雲の層を抜けた。雲を抜けると、はっきりと上海の街が見える。やはり雲の見え方が日本と違うと思ったのは気のせいか、と思っている間に飛行場に到着した。空港を出て地下鉄10号線に乗る。何気なく、地下鉄の中のテレビニュースを見ていると、「今夜の花火は小花火にしましょう。昨年度は花火のせいでPM2.5が制限値の2.7倍になりなした。」と書いている。そういえば中国にはお正月に爆竹を鳴らす習慣があったなと思いだす。夕方になると爆竹なのか花火なのか、あちらこちらで断続的にバンバンと音がする。そのうち1ブロック離れた門にガードマンがいる高層マンションでも花火が上がり始めた。近くなので野次馬根性で見に行った。小さい男の子とお父さんが庭で花火を上げている。どうも家庭ごとにバラバラに庭に出てきて花火を上げているようだ。そうかこれが中国流の新年のお祝いの仕方かと思いながらホテルに帰る。ホテルの窓から眺めると、ウルムチ北路の数ブロックむこうでは10分間隔とか断続的にカラフルな大型線香花火や日本風の大輪の菊や小菊花火があがっている。1時間ほど音がするたびに窓から見ていたが、いつまでたっても終わらない。
見るのに疲れて本を読み始めた。真夜中24時前に大きな花火の音がする。窓辺に行くとホテルの横で花火が上がっている。私の部屋は11階なので、ホテルのすぐ横の通りで花火を上げているようだ。その花火が私の部屋の真横で開いている。ただし、見えるのは大きく花火が開いた時だけだ。しかし10mほどの距離で見る花火は迫力がある。また、煙ももの
すごい。この煙が出るのなら、市当局がPM2.5の警報を出すのも納得と思うような煙だ。このホテル横の花火が終わってしばらくすると、一段と大きな音がする。ちょうど24時ころだ。
窓を開けるとホテルの敷地の横の交差点で花火が上がり始めた。小さな花火で30m位上昇し、大きな花火は50m以上上昇してから開いている。大きな花火箱が30個くらいだろうか、交差点の横に置かれていて次々に花火が揚がる。一つの箱から何個ぐらいの花火が上がっているのだろうと数えてみる。打ち上げの速度が速いので正確には数えることが出来ない。しかし、1つの箱から50発以上の花火だ。それが30分ほど続く。交差点なので車が次々に来るが、思い切って横切る車、激しく花火が揚がるので花火が小休止になるまで停車して待ち小休止になったところで横切る車といろいろだ。一台のタクシーは前進をあきらめて、Uターンしていった。上海の車はお正月の花火には勝てないと思っているのだろう。そのうち、2000発だろうか花火が終わった。
あくる朝通りを見ると道路に昨日の花火の残骸が積まれている。50発以上の打ち上げ花火はどのような仕組みなのかに興味があり、散歩を兼ねて見物にいった。それが下の写真だ。花火が多い箱は100発、大型花火で本数が少ない箱でも40発くらい。これはお金もずいぶんかかっている。1箱1万円として30万円。1箱2万円なら60万円だ。
町内会ででも募金を集めてあげているのだろうか。春節を爆竹で祝うのは、魔よけの意味もあり、市民の昔からの楽しみの一つだそうだ。ただ、上海紙によると、市統計局の調査で、8割の人が空気を良くするために年間を通して爆竹などを禁止するのに賛成と答えた。一方、春節の際に爆竹をやめるのに反対と答えた人のうち、6割が「伝統文化や習慣を変えたくない」と答えたとか。上海市民の気持ちを変えるのはPM2.5でも難しそうだ。今日の上海の空はなんとなく曇っている。 (丸山 豊史)