乗用車自動運転の未来(コネクテッドカー)

ネットワークにいつもつながっているクルマ「コネクテッドカー」を知っていますか。コネクテッドカーとは、GPS(全地球測位網)から収集される位置や速度などの情報、車両からの制御情報や各種センサー情報などのデータをクラウド上に集め、そのデータを解析することで「渋滞」「工事中」「交通事故」などの道路状況を把握する車です。道路情報を正確に把握できれば、次は自動運転です。
情報の収集に使うツールには、たとえばスマートフォンがあります。例えば、クルマに取り付けたスマートフォンの加速度センサーが急ブレーキを検知して自動的にクラウドへ送信します。この情報が集中した地点を「急ブレーキ多発地点」として地図にマークします。また、SNSでも情報を集めます。スクールゾーンなど走行に注意が必要と感じたエリア、事故や災害で通れなくなった場所をスマートフォンで投稿すると、その地点を地図にマーク出來ます。さらにスマートフォンのカメラが運転中に捉えた標識や看板の情報もクラウドへ送信すると、見にくい標識や重要な標識も、投稿された情報を基に地図上にマークされていきます。こうしてリアルタイムに更新されていく地図を使い、「この先、急ブレーキ多発地点です」「この先、スクールゾーンです」「この先、工事が行われています」といった注意が必要な地点を走るドライバーにメッセージをタイミングよく伝え、注意を促すシステムを構築していきます。このようにしてみんなで集めた情報を社会や会社で一緒に使えば、事故防止と安全への確かな力を手に入れられます。
また、ビジネスの面でもこのしくみは生かすことができます。例えば、配送業などのルートサービスで効率的な配送・巡回計画を実現するための運行管理システムへの活用があげられます。運行管理システムのベースとなる地図情報は、さまざまな用途で使われる汎用性の高い情報がメインです。そのため、現在は運転者一人一人の運行ルートや安全指示、注意点などを指示することができません。でも、クラウドを活用して独自の地図情報を作成・配信することができます。このサービスを使えば、「この曲がり角は飛び出しが多い」「道幅が広いので休憩するならこの場所で」といった、実際に走って知り得た同僚ドライバーのノウハウを従業員全員で共有することができます。カーナビやタブレットなどに表示されるオリジナルアイコンは、手元のスマートデバイス から簡単に登録できます。あるタクシー会社は1カ月あたり数千件ものデータを追加登録しながら、「この辺りは夕方の乗車が多い」などより利便性や安全性の高い運行管理とナビゲーションに役立てています。
クルマで走行中、最寄りのショッピングモールからカーナビに「タイムセール実施中」との情報が表示されました。「寄ってみようか。でも駐車できるかどうか心配だな」--そんな不安もなくなる時代が近づいています。いま、カーナビやスマートデバイスに利用者の好みにあった店舗情報を配信した上で、最も近い駐車場の空きスペースに誘導し「自動駐車」するまでのシステムも開発中です。利用客がホテルの玄関前でクルマを降りると、係員がキーを預かり駐車場まで運んでくれるシーンを想い起こしてください。将来はそれをクルマの自動運転が実現してくれるのです。運転者はショッピングモールの入り口でクルマを降り、そのまま店内で買い物を楽しむだけ。その間にクルマは空きスペースを勝手に見つけて自動で駐車します。立体駐車場や、狭い柱の間のスペースだったとしても、衝突を回避しながらスムーズに駐車してくれるのです。さらに帰る時には、クルマがあなたを迎えにきてくれます。クルマのキーまたはスマートフォンから信号を送れば、あなたがどこにいるのか、いつごろ到着するのかを計算し、ショッピングモールの駐車場の出口で待っていてくれるのです。このような話も決して夢物語ではありません。
このほかにも、収集したデータから分析されるドライバーの「運転特性診断サービス」が考えられます。この技術により、保険会社では自動車保険を提供できることなどが期待されます。将来は、運転特性として「安全な運転をするドライバー」だと判定された場合、保険料が安くなる、逆に「危険な運転をしがちなドライバー」だった場合は、クルマに一定の自動制御(スピードや自動運転の有無など)を付ければ保険料が下がるといった新しい保険プランも出てくるかもしれません。あるいはカーシェアリングを提供する企業なら、ドライバーの運転特性に合わせてクルマの制御を自動的に変えるといったサービスも可能になるでしょう。(丸山 豊史)