数えきれないほど叩かれて:日本のスポーツにおける子どもの虐待

今年の10月、日本スポーツ体育健康科学学術連合より、日本体育学会会員に対し、ヒューマン・ライツ・ウォッチ報告書「数えきれないほど叩かれて:日本のスポーツにおける子どもの虐待」が共有されました。今回のブログでは、若干ではありますがこの報告書を紹介したいと思います。

ヒューマン・ライツ・ウォッチとは、1978年に設立された非営利の国際人権組織です。ホームページでは、この組織は世界各地に約280名のスタッフを有し、これまで多数の国際的な調査・報告を展開してきたと説明されています。このヒューマン・ライツ・ウォッチから、日本のスポーツ経験者あるいはスポーツ団体を対象とした暴力や暴言に関する調査結果が発表されました。

調査結果は、次のURLから誰でも閲覧できます。https://www.hrw.org/ja/report/2020/07/20/375777

この調査では、スポーツ経験者56人へのインタビュー調査、およびオンラインアンケート調査(757件の回答)が行われています。以下には、インタビュー調査で得られたデータの一部を引用します。

「数えきれないほど叩かれました。……集合の際に呼ばれて、みんなの目の前で顔を。血が出てたんですけれど、監督が殴るのは止まらなかったですね。ちょっと鼻血が、と言ったんですけれど止まらなかったです(報告書1ページ)」

「水泳選手たちが足ひれで、殴られていました。目標タイムを出せなかったら、(泳ぎ終わって)タッチした時にコース台の上のコーチから、罰としてストップウォッチのベルトで首を吊られたりするんですよ。……1回、浸水したらそのまま沈んで、コーチに殴られて、意識を取り戻すということがありました。……高校の水泳部で練習をさぼっていたメンバーが全員プールサイドに並べさせられて、1人ずつ殴られていくんですよ。それで衝撃で、みんなプールに落ちるっていう。……このような記憶は鮮明に残っています。そこで習ったのは、スポーツの楽しさじゃなくて、諦めないっていう気持ちだけですよ(報告書22ページ)」

同報告書では、最終的には、日本のスポーツには暴力や暴言あるいは虐待が存在しており、さらにはその問題へのスポーツ団体の対応が不十分だと結論づけられています。同報告書により、国際的な視点から、これまで以上に日本のスポーツ界における暴力・暴言・虐待が問題化されたと言えるでしょう。

同報告書から、スポーツやスポーツ経営現象を批判的に検討していく必要性を改めて認識しました。スポーツ振興の担い手となることを目指す本学スポーツ経営コースの学生には、ぜひ一読して欲しいと思います。   (宇野 博武)